私をくいとめて

2017年綿矢りさ作。主人公は30代半ばの女性。多田とは互いに気があるのに、今以上の進展がなく、このままでよいのか思い悩む。

相談相手は自分の分身「A」。一人でいる時間はAが主人公のそばに現れて、あらゆる助言し主人公を暖かく包む。

一人の時間が自然体でいられ、必要以上に求められると自分を保てない。とはいえ、一人きりでいると孤独感に苛まれる。

往々にして、人はそんなものだろうが、この小説の主人公は変わっており、Aなる存在がいるために、人よりも孤独という感覚が薄いように思われる。

人との距離感は男女おいて違いがあるにせよ、多田が主人公に求める態度はよくわかるし、主人公がとった態度はよくわからない。その差が男女の本質的な違いを表しているのだろうか。

男女の関係は好きなら付き合えばよいし、互いを求め合えばよいと思うが、そんな単純なものではなさそうだ。